韓国電子技術研究院(Korea Electronics Technology Institute、以下KETI)は、韓国の電子・製造業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)とAIトランスフォーメーション(AX)を支援する専門研究機関です。KETIは、学術的な研究成果を生み出すだけでなく、企業や産業の現場で求められる技術を見つけ出し、事業化が可能な形へと具体化する役割も担っています。研究開発と事業化を結び付ける「R&DB」の中核機関として、韓国の産業競争力向上を支えています。
KETIの研究分野は、半導体、ディスプレー、自動車・電気自動車部品、電子材料・電子部品、エネルギーなど、韓国の製造業を広くカバーしています。中でも近年、重要な課題の一つとなっているのが、製品設計から生産現場まで、AI技術の導入と活用を支援する取り組みです。
KETIは2026年、製造AI専用のAIデータセンター(AIDC)を構築する計画です。この基盤を活用し、製造業向けAIモデルの開発、学習、実証、産業現場への導入など、幅広い研究開発を進めます。

課題:単体システムから共有型AIインフラへ
複数の研究者や開発者が同時にAIモデルを開発するには、まず高性能なGPU AIインフラが必要です。加えて、計算リソースを安定的かつ柔軟に共有できる環境も欠かせません。
AIモデルの開発、学習、検証、デプロイ、管理まで、一連のプロセスをカバーする統合型MLOpsプラットフォームも必要です。 さらに、GPU、ストレージ、ネットワークなど、さまざまなAIインフラリソースをまとめて管理する運用プラットフォームを整備し、リソースの稼働率と運用効率を高める必要があります。
しかし、複数の利用者が共有し、長期間にわたって安定稼働するAIインフラを構築することは簡単ではありません。KETIは計画を進める中で、主に次の3つの課題に直面しました。
高性能AIインフラの構築には高い技術力が必要
複数の研究者が同時に利用できるGPU AI開発環境を構築しなければなりません。単に高い計算性能を備えるだけでは十分ではありません。複数の利用者が同じ基盤を共有するマルチテナント環境において、システムの安定性と利用者間の分離を確保する必要があります。同時に、限られたGPUリソースを効率よく割り当てる仕組みも求められます。
AI開発プロセスを一貫して管理する仕組みがない
AIプロジェクトには、モデルの開発と学習だけでなく、検証、デプロイ、運用、継続的な更新まで、幅広い工程が含まれます。統合型MLOpsプラットフォームがなければ、各工程で利用するツールやデータを個別に管理しなければなりません。その結果、運用が複雑になり、研究開発の効率やチーム間の連携が低下する可能性があります。
異なるリソースが分散し、全体の利用率を高めにくい
GPU、ストレージ、ネットワークなどのリソースを別々のシステムで管理すると、リソースの分断が起こりやすくなります。一部のリソースが長時間使われない一方で、特定のリソースに需要が集中し、割り当てに偏りが生じる可能性があります。管理対象と運用プロセスが複雑になるほど、基盤全体の利用率が低下し、管理コストも増加します。
つまり、KETIが必要としていたのは、これらの要件を満たす効率的なAIインフラプラ管理プラットフォーム でした。このプラットフォーム は、製造AIモデルやアプリケーションの開発を支援するだけではありません。研究室での検証、テスト環境での実証、実際の製造現場への導入を支える共通基盤としても活用できます。
AI-Stackがもたらす効果と産業価値
AI-Stackの導入により、KETIは複数の研究者と複数のプロジェクトが共同で利用できるAIインフラ環境を構築しました。同時に、製造AIDCにおけるリソース管理と運用体制も改善しました。
研究者は、プロジェクトの要件に応じてGPUリソースを迅速に利用できるようになります。これにより、モデル開発や学習を開始するまでの待ち時間を短縮できます。プラットフォーム管理者は、単一の管理画面から、GPU、ストレージ、その他の主要なインフラリソースを集中管理できます。運用の複雑さを抑えながら、リソース割り当ての効率を高めることが可能です。
INFINITIXのインテリジェントなリソースオーケストレーション機能と共有機能を活用することで、GPUリソースが使われない時間を減らせます。また、プロジェクトの優先順位やワークロードの特性に応じて、リソースを効率的に割り当てることができます。その結果、GPUの利用率向上だけでなく、AIインフラの総保有コスト(TCO)を抑えるための運用基盤も整備できます。
AI-Stackは、将来的なGPUや計算リソースの追加・拡張にも対応できるAI研究開発基盤を提供します。KETIはこの基盤を活用し、製造業向け基盤モデル(MFM)やスマート製造技術の研究に必要な計算環境を提供できます。さらに、AI技術の開発、検証、実証を体系的に支援することが可能になります。
今後の展望
今後もAI-Stackは、KETIの製造AIDCにおけるインフラ設備とプラットフォーム機能の拡張に活用される予定です。より多くの研究者や開発者が、AIモデルの開発、学習、テスト、検証を行える共有環境を提供することで、高性能なAIインフラを利用するためのハードルをさらに下げることが期待されています。
異なる種類の計算リソースを対象としたオーケストレーション、リソース共有、統合管理の各機能を通じて、AIインフラの利用効率を継続的に高めることができます。今後、計算リソースの規模や利用者数が増加した場合でも、一貫した運用体制を維持できます。これにより、拡張性と共有性を備えた製造AI計算プラットフォームの構築を支援します。
KETIはこの基盤を活用し、韓国の製造企業や研究機関によるAI技術開発を支援する計画です。さらに、製造業向けAIモデルやスマート製造アプリケーションの実証を進め、産業現場への導入を加速していきます。