1|なぜモデルがこんなに増えたのか?
OpenAI の提供モデルは、現在おおまかに 2つのシリーズ に分かれています。
シリーズ | コアコンセプト | 得意分野 |
GPT | 情報量の膨大さ──巨大コーパスで学習し、多言語テキストを滑らかに生成 | 会話、クリエイティブライティング、一般知識、画像・音声(GPT-4o 以降) |
o | 推論の深さ──ステップバイステップで思考し、ツールを呼び出す | プログラミング、数学、データ分析、自律エージェント |
「新しいものが旧モデルを置き換える」というより、コスト・速度・推論深度に応じて最適解を選ぶためのラインナップと考える方が実用的と言えるでしょう。
2|開発年表と系統図
3|GPT-3.5 から GPT-4 Turbo まで
GPT-3.5-Turbo
リリース:2022 年 11 月
コンテキスト:16 K
API 価格:$0.002(入力)/$0.006(出力)/1 k token
向いている用途:大量のFAQボット、PoC、低予算で精度妥協できる領域。
GPT-4(旧 8 K 版)
リリース:2023 年 3 月
コンテキスト:8 K(32 K 版は廃止)
API 価格:$0.03/$0.06
向いている用途:すでにコンプライアンス審査を通過したシステムで、出力形式を変えたくない場合。
GPT-4 Turbo
リリース:DevDay 2023(11 月)
ハイライト:128 K コンテキスト、価格は GPT-4 の約 1/3($0.01/$0.03)
向いている用途:長文ドキュメントのQA、契約書レビュー、大規模コードベースとの対話。
4|マルチモーダルの飛躍──GPT-4o(omni)
指標 | GPT-4 Turbo | GPT-4o |
テキスト+画像入力 | ✔︎ | ✔︎ |
音声 I/O(リアルタイム) | – | ✔︎ |
スピード | 基準 | 約 2 倍 |
価格(1 k token) | $0.01/$0.03 | $0.005/$0.015 |
コンテキスト | 128 K | 128 K |
活用例:音声アシスタント、スクリーンショットQ&A、マルチリンガルのライブチャット。
5|推論特化──o シリーズ
なぜ “o” と呼ぶ?
- 長めの内部思考:手順を自分で分解しながら回答
- ツール呼び出しが標準:ChatGPTでは自動的にPythonやWebを開く
- 画像推論も同じパスで処理
o3
リリース:2025 年 4 月
特徴:公開ベンチマークで最高クラスの推論・コーディングスコア。
価格:$0.01(入力)/$0.04(出力) ※プランによって割引あり
ベストシーン:データサイエンス・ノートブック、アルゴリズム講座、複雑な自律ワークフロー。
o3が特別な理由
GPTシリーズとの最大の違いは、o3が「考えながら自律的に情報収集まで行う」点です。思考プロセスで不足を検知すると、ChatGPT内蔵ツールを自動呼び出し──リアルタイムウェブ検索、Python コード実行、ファイル解析、画像生成など──を組み合わせます。公開データ取得からスクリプト計算、グラフ作成、結果解説までを 1 分以内に完了し、簡易セルフファクトチェックで幻覚を抑制。テキスト・数値・ビジュアルを統合したデータドリブン回答が必要な場面では、現行公開モデル中で最有力候補がo3です。
o4-mini
o3をコスト1/3程度に抑えたライト版。推論性能は維持しつつ、速度と料金を最適化。
ベストシーン:大量コードレビュー、中程度の AI エージェント業務。
6|GPT-4.5 Preview とは?
- 自然なトーン:マーケティング文が “AI ぽさ” を感じにくい
- 事実精度・コーディングも小幅アップ、価格は4oより高め
- 現状はChatGPT Plus/Teamのみ。API 正式版は未定
ブランドトーンが重視される現場で A/B テスト的に試す のが良いでしょう。
7|モデル選定早わかりマトリクス
重視ポイント | 第一候補 | 理由 |
コスト最優先 | GPT-3.5 | 圧倒的に安い |
画像・音声のリアルタイム | GPT-4o | マルチモーダル一括処理 |
超ロングコンテキスト | GPT-4 Turbo もしくは 4o | 128 K に対応 |
ステップ推論 & ツール連携 | o3 | Chain-of-thought 標準装備 |
高品質なコピーライティング | GPT-4.5 Preview | トーンが滑らか |
既存ガバナンスを維持 | GPT-4(8 K) | 仕様変更が最小 |
8|価格とパフォーマンス(2025 年 4 月時点)
モデル | 入力 | 出力 | 速度※ |
GPT-3.5-Turbo | $0.002 | $0.006 | ★★★★☆ |
GPT-4 | 0.03 | 0.06 | ★★☆☆☆ |
GPT-4 Turbo | 0.01 | 0.03 | ★★★☆☆ |
GPT-4o | 0.005 | 0.015 | ★★★★★ |
GPT-4.5 Preview | 0.008 | 0.024 | ★★★★☆ |
o3 | 0.01 | 0.04 | ★★★☆☆ |
o4-mini | 0.003 | 0.012 | ★★★★☆ |
※社内測定による相対評価(レイテンシ+トークン毎秒)。
9|モデル別プロンプトのコツ
モデル | コツ 1 | コツ 2 |
GPT-3.5 | 短文・箇条書きで指示明確化 | 出力フォーマットを指定 |
GPT-4 Turbo | system で語調固定 | マニュアル全貼り+質問 |
GPT-4o | 画像付き→状況共有、音声→句読点明確 | 「speak as: …」で声色指定 |
GPT-4.5 | 「日本のITメディア風」などスタイル指示 | ブランド用語集を提供 |
o3/o4-mini | 「まず考えてから答えて」を提示 | JSONスキーマで誤回答防止 |
10|今後の展望
- 推論レベルの可変化:o系列のmini/標準のように、GPTも段階制になる可能性。
- マルチモーダルのさらなる融合:4oの単一パス処理が次世代標準に?
- ネイティブエージェント:ChatGPT のツール呼び出しは、ローカル実行型マイクロエージェントの布石。
11|まとめ
- 最新=最適ではない。コスト・速度・推論深度・ユーザー体験の4軸で判断。
- 小規模テスト → 本番移行が鉄則。100本の実データ検証はスペック表より信頼できる。
- プライシングは変動する。1 年で 80 %以上値下げされた例もあり、定期的な見直しが必要。
予算 | 推奨構成 |
💸 スタートアップ | GPT-3.5 + o4-mini(難問時のみ) |
💼 中小企業 | GPT-4oはメイン、詳細解析は o3 |
🏢 大企業 | GPT-4 Turbo+o3、ブランディング強化に4.5を試験導入 |
本ガイドが、多種多様なモデルがあふれる中で、あなたのプロジェクトに最適なモデル選定の「決定打」となり、AI導入の効率化と成果アップに役立てば幸いだ。